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2005年01月31日
第四話『どうしてそんなに・・・』
普段はだいたいパソコンに向かって仕事をするのだけれど、ときどき、どうしてもテーブルで物書き作業をしないといけないことがある。めったに使わないテーブルを出してきて、筆記用具や資料を積み上げ、お茶セットも用意してやれやれと作業を始めると、目を輝かせてテーブルに乗ってくるのは我が家のわがまま一人息子「ねこにゃん」だ。
テーブルの大きさはだいたい縦横60センチぐらいずつ。資料とお茶セットを置くともう、いっぱいいっぱいになるというのに、肥えて4.5キロになった巨体がむりむり乗ってくる。そして、書き物をする資料の上にどかっと腰を下ろすと、当然の顔をしてグーグー言い出す始末。仕方がないので、腹の下に敷かれた資料を引っ張り出し、かろうじて空いている角の小さな小さなスペースで、辛い思いをしながら書き物をしていると、のっそりと顔を起こしては、かりかりと動く鉛筆の先にほっぺたをこすりつけてきてはすりすり、すりすり……。
「あのね、とっても邪魔なの」
一応言ってみるけれど「僕のこと好きでしょ」と言わんばかりの顔でご機嫌を取ってくるねこにゃんに「しょうがないなぁ」と根負けする私。そして、好き放題の寝姿で資料の一切をけり落とす彼に、最後には床にはいつくばって書き物をしながら「なぜ君がそこで寝ているの、どうして私がここで仕事をするの!」と暴れてみるけれど、当の本人はどこ吹く風。
そういえば、雑誌や新聞を広げて読んでいると、やっぱりその上にどかっと座り込むことが多いような気がする。猫ちゃんって、紙の上が好きなのかな?ちょっと不思議に思う今日このごろ。
2005年01月15日
第三話『しろくろ』
今の土地の裏に住み着いている猫家族の話は第二話で書いたけれど、この土地に引っ越してきて一番最初にお知り合いになったのは、白黒柄のメス猫だった。
うちから400~500メートルぐらい離れたところにあるコンビニの前で、ぽつんとたたずんでいた彼女は、当時で多分2歳ぐらい。とても人懐っこくて、おとなしい猫だった。
彼女を見たときにまず目を引いたのが、白と黒のバランスのよさ。
白黒柄の猫は、結構、黒の配分が多くてバットマンのようになっていたり、白の部分が多くて、目の上の黒い模様がまことちゃんカットみたいに見える子が多いけれど、彼女の場合はなんともいえず絶妙にホルスタインなのだ。
周囲の人によると、この子はもともとは飼い猫だったらしいのだけれど、その家の猫があまりに増えてしまったので、野良にしてしまったということだ。
言われてみれば、確かに人なれしていておとなしい。明らかに飼われたことのある猫ちゃんという感じだ。しかも病気すらした様子がないから、予防注射をきちんと受けていたのだろうと思うし、聞いたところによると避妊手術までしてあるそうだ。
そこまで大事にしておいてなんで……と、割り切れない思いを抱いてしまったのは私たち夫婦だけではなく、周囲の人たちはみな一様に「なんでこんないい子を捨てるかねえ」「増やす前に、まずは今いる猫じゃないのねぇ」と言っているそうだ。
しばらくしてから、この子の名前は「チョロ」だということがわかった。近辺の人たちにかなりかわいがられているようで、通り過ぎる人たちが必ず「チョロ、チョロ」と声をかけていく。その多くが、必ずご飯をあげていく。野良にはなったけれども、この子は、野良の中でもかなりいい方の生活をしているのかもしれないと思ってしまった。食べ方もおっとりだし、好きなときに食べるという感じだ。
そして、私たちも例に漏れず、ご飯を持ち歩いては「チョロ」にあげるようになった。ただどうも、チョロという名前だけは呼びづらく慣れないので、最初に呼び始めたときの名前でもある「しろくろ」のまま呼び続けているのだけれど、さすが彼女は賢い。しろくろ、と呼んでも駆け寄ってくる。すっかり仲良しになってしまった。
周囲の猫とはあまりうまくやっていないようだ。
というか、しろくろはどうも「猫なんか嫌いよ」の女王様タイプの猫みたいで、近くに猫がいると、ものすごく怒る。食べていたご飯も途中で止めてしまう。みんながしろくろにご飯をあげるので、そのおこぼれに預かろうとした野良が、一気に3匹増えたことがあった。そのときのしろくろといったらいつもご機嫌斜め。しゃーしゃーいってばかりだった。
その3匹の野良のうち、2匹は白黒柄、1匹は茶シマ柄だった。このあたりは白黒人口(猫口?)がとても多い。この子たちの話題もいずれ……書き留めておこうと思う。
最初に会ってから、もう4年ほどたつけれど、しろくろはいまだに健在だ。寿命が短いといわれる野良にしては、かなり健康的で元気がいい。まだまだ何年もいけそうな勢いだ。毛づやも手触りも最高にいいし、食欲もある。いつもビッグサイズ生缶をペロリと平らげる。
わがままで猫嫌いな我が家の1人息子「ねこにゃん」がもっと、おおらかな猫だったら、いつでも連れて帰るのに……と思う今日このごろ。
2005年01月01日
第二話『おやじという名のお袋』
今のところに引っ越してきたのは4年ぐらい前だけれども、当時、うちのすぐ裏の用水路に二つの猫家族が住み着いていた。
一つは三毛猫ママとその子どもたち。そして、もう一つの家族は、茶シマに白の入ったママ猫の一族。
三毛猫ママの方は、仔猫を産んだばかりでいつも気が立っていた。ご飯をあげに行っても、近くを通り過ぎても、常にシャーシャーと威嚇する。その威嚇の仕方がまた珍しかった。普通、猫は蛇みたいに「シャー」と言うけれど、どう考えてもこの三毛は「シャッ」としか言っていない。極端に短いのだ。いつしか彼女は、私たち夫婦に「シャー子」と呼ばれるようになった。シャーシャー言うからシャー子。
シャー子の仔猫は黒猫と、茶猫、そして、黒と茶がごちゃ混ぜになった雑巾みたいな柄の仔猫の3匹。けれど、仔猫の3匹は、決して人前に出てこなかった。シャー子が出さないのかもしれない。2年後ぐらいに、雑巾柄に似た猫を一度だけ見かけた。大きくなって、自分でご飯を捕れるようになったのかもしれない。シャー子は、相変わらず今も時々ご飯をねだりに来る。
かたや、茶シマママの一族の話題は尽きないほどある。
茶シマママのことは、私たち夫婦は「おやじ」と呼んでいる。
これにはわけがあって、当初、シャー子にご飯をあげていたときに、かなり後からシャー子に割り込んでご飯を食べに来る猫がいた。背中は茶色のシマシマで、おなかとお手々と顔の一部が白い成猫。ずいぶん態度が大きく、かといって、シャー子が特に威嚇するわけでもなかったので、シャー子の仔猫のパパなのだろうと思っていたのだ。人一倍食欲もある。
でも、シャー子と会ってからほんの数カ月後のある夜、ゴミを出しにいったときに「おやじ」が、自分と同じ柄の猫を3匹引き連れてすり寄ってきた。おやじが4匹出てきたのかと思ったほどそっくりな彼らは、だけど、おやじよりも一回りも二回りも小さい。もしや、と思っておやじのしっぽを持ち上げてみたら、なんと。今までオスだと思っていたおやじが、メスだということに気がついた。このそっくり仔猫たちの母親だったのだ。
そうか、それで人一倍食欲もあって、シャー子とは仲がよかったのかと、そのときには納得したけれど、長い間「おやじ、おやじ」と呼んでいたので、以降彼女は、おふくろなのにおやじと呼ばれるという奇妙な猫になってしまった。
おやじの仔猫はみんなかわいくて元気で人懐っこい。ご飯もたくさん食べる。
野良はあまり長生きをできないというけれど、君たちは長生きしなよ、と声を掛ける日々が始まった。